腹腔鏡下前立腺全摘術の顛末

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 人間ドック後のMRI画像で癌の疑いと言われた時に、父をはじめ親戚に癌が多いこともあって、ああ来るものが来たと覚悟を決めました。

6/2〜4の2泊3日で検査入院し、前立腺の生検というものを受けました。一応検査ということになっていますが、手術台に乗って下半身麻酔の、見た目あれは手術でっせ。
会陰部から針のようなものを刺して組織を30ヶ所取るという極めて野蛮な方法で、麻酔をしているから痛くはありませんが、また先生がメガネっ子の女子で、下半身は丸出しだし、ちん◯は触られるし、もうどうにでもしてくれ!
手 術後は尿道に管を入れられて血尿は出るし、炎症のせいか微熱は出るし、平地を少し歩いただけでぐったり疲れるしで、10日余経っても完全には元の体調には 戻りませんでした。(背中に打った麻酔は凄かった。針を何回か刺したがその内の1回は電気のようなものが背中から加速的に足の付根まで飛んでいった。)

覚悟を決めていたせいか、生検によって癌が確定した際にもあまりショックは受けませんでした。前立腺癌は進行の遅い癌というのも割合楽観的になれた原因かもしれません。
従兄弟に泌尿器科の医師がいるので、ただでセコンドオピニオンを聞けたのは非常に心強く、放射線治療の方が体は楽で効果も同じとのことですが、他の臓器への影響や、癌自体が完全に排除できるかがわからないので、手術を選びました。
そのこともあって怖いということもなく、手術の前夜や直前も、不思議なくらい緊張しませんでした。

全身麻酔の前に手術後の痛み止めのために、背中からカテーテルを入れるという方法だったので、先に背中の局所麻酔をしました。
この時、切れ長の目をした美人麻酔科医が手を握って名前を呼んでくれるので、恋の麻酔にかかりそうとか阿呆なことを考えているうちに目が覚めると手術自体は終わっていました。

術後3日ほど最高38度くらいの熱が出てしんどかったが、夢に父が出てきて、作業服を着てどこかの工事現場?に一緒に仕事に行った。
父は事務職だし、一緒に仕事をしたこともないのに。

次に男性機能の喪失。(今更子供を作ることはないので、これは別に困らないのだが・・・)  
まず前立腺と精嚢を除去しているので、精液を作る器官がない。したがって射精は不可。
また前立腺の外側には勃起を司る神経が走っているが、それをすべて温存して前立腺を全摘出することは難しく、大なり小なり損傷を受け、五分五分以上の確率 でEDになる。(ロボット手術だとリスクは減少?)このリスクは承知していたが実際にEDになると結構気分が落ち込みます。
手術後、体からチューブが出ていてシャワーできない時に、めちゃ可愛い看護師さんがちん◯を洗ってくれたが勃ちませんでした。(笑)←ほんとうに大変な仕事だと思います。(五体不満足な乙武さんに負けてるなあ。)

病院にはWiFiが来ていて、NET経由で馬券購入ができ、入院中に少し儲けました。(笑)(考える時間はたくさんあります。)
退院の日には、ちん◯が痛くて体力がなく、電車を降りて最寄り駅から家までの1kmが歩けず、タクシー!

 手術から3週間経過後の状況
 (2016/9/15)
やはりそれなりの規模の手術(6時間)だったので、後の方が大変です。もっと重い病気で苦しんでおられる方がいるのはわかってますが・・・

1)前立腺を取ると膀胱と尿道を直接接続することになりますが、やっぱ切っているので座ると会陰部内部に痛みがあり、車も10〜15分くらいしか運転できない。(接続自体はうまく行っているとのことだが、座り続けるのがつらい。)

2)かと言って立っているとちん◯が痛くなり、10分程度でも脂汗が出る。(寝転ぶと徐々に収まるので炎症とかではないと思うが)
 したがって長く歩けない。(これはNETを調べても同様症状が見当たりませんでした。原因不明。リンパの流れが変わったせい?漢方薬をお試し中。)

3)尿漏れの症状は100%出るというのはわかっていたが、力むとちょっと漏れるというレベルではなく、歩くとだだ漏れ。
(膀胱に溜まらない。大半漏れているような状態。横になっていれば少し漏れるだけなので夜は問題なく寝られますが。)
 手術前は漏れてもしゃーないなあと安易に考えていたが、実際にはなかなか鬱陶しく、トイレのお世話になる回数が多い。
 尿が漏れて下着を濡らすと人間て不浄の生き物だなあとつくづく思う。

4)元々少ない体重が3kg減の49kg! 競馬の騎手になれそうだ。

 →よって家の中でゴロゴロしてます。いつになったら山に登れるでしょうか?

 考えてみると確かに癌は取り除かれたかもしれないが、元々何の自覚症状もなかったので、明らかにQOL(Quality of Life)が低下している。
尿漏れや局部の痛みによって外出や長時間の歩行が制限され、男性機能は失われた。PSA腫瘍マーカーによって前立腺癌の発見率は向上したが、
生存する期間については放置した場合と手術した場合とで有意差がないとのデータもあるようだ。(手術をするネタを作っているだけ?)

愚考するに、機能を維持しつつ癌を除くのが本当の治療であって、それができないので命とQOLをバーターしている。
進行の遅い前立腺癌なら先に他の原因で死ぬかもしれない。手術で取り除けて良かったねと言われたが、本当にそうだろうか?

 手術から6週間経過後の状況 (2016/10/4)
1)の痛みはかなり改善したが、痛みと違和感は残る。
2)は少し良くなり、9/30に伏見稲荷の山頂・一の峰(233m)まで手術がうまくいった御礼にお参りしたが、体力的には一杯一杯だった。
  歩いている時は比較的痛みは少ないが、立っている時ほか座っている時痛むこともある。
  漢方薬は効いていると思えないので止めて、痛み止め(ロキソニン60mg)を飲み続けている。
3)尿漏れはダメです。治るのかな。
4)体重は復帰しました。

 手術から10週間経過後の状況 (2016/11/1)
1)の痛みはなくなった。
2)は痛み止めは不要な程度になったが、立っている時少し痛む。
3)尿の出方が細くなって勢いがない。それなのに尿漏れは歩いていると相変わらずだだ漏れです。(座っている時の漏れは大分改善されたが)
  尿漏れ対策をしたまま、300mくらいはほぼ以前のペースで登れるようになったが、歩いた後の疲れは酷い。

 手術から11週間経過後の状況 (2016/11/10)
  尿の出が細くなっただけでなく、時にポタポタしか出なくなったので、ちん◯の先からカメラを突っ込んで調べると言う。
 (膀胱鏡ファイバースコーピー)
 尿道口からすぐのところで尿道が狭くなっており、多分だが手術後ドレインチューブを抜いた時に飛び上がりそうに痛かったので、その時できた傷が
 治って盛り上がり尿道が狭くなったらしい。尿道狭窄症という前立腺癌の根治手術後の後遺症だ。
「広げておきました。」と言われたが、機械的に広げた(狭窄部の切開??)ようだ。
 確かにおしっこはよく出るようになったが、また傷ができ?、痛みが少々復活?した。
  ちなみにカメラを入れるには散髪屋のような椅子に座るが、これが電動式で背中が後ろに倒れると同時に両脚が開かれるという羞恥プレイに使えそうな
 代物で、下半身丸出しの恥ずかしい格好だ。
 件のメガネっ子女子の先生がまず細いチューブで麻酔ゼリーを注入したが、それでも広げた?時は少し痛かった。

 手術から3ヶ月経過後の状況 (2016/11/28)
  尿の出は普通になり、痛みも時々ちらっと出るくらいでほぼなくなりました。尿漏れも家の中で普通に生活する分にはかなり少なくなりました。
 ただ早く歩いたり、山登りをすると力が入ってどうしても漏れる量が多くなります。
 骨盤底筋を復活させるのに3ヶ月かかったということですが、完全ではないので徐々に改善してゆくしかないと思っています。

 EDの状況
  前述した神経の損傷の度合によって、EDの程度は千差万別と思うが私の場合、1)脳からの下り信号(勃起せよという命令)は全くNG
 (届かないので勃起しない) 2)上り信号(愛撫による感じる度合)は、感覚的に以前の半分程度か(以前ほど気持ちよくならない)
 3)絶頂に達する感覚は有り(したがって射精しようとするが) 4)射精は不可(何も出ない) 
  生殖に関する機能は、いろいろな部分が複雑に機能を分担しているようだ。 


9/5〜12/19 までの尿漏れ量変化(mL/day)
ピークが出ているときはリハビリで歩行した日が多い。

  経緯(2016年)

4/12:人間ドック PSAマーカー=4.2ng/mL  ←基準値4ng/mLより少し高いだけです。
5/11:再診 MRI と超音波
5/16:再診の結果 MRI画像に癌の疑い
5/23:入院前検査
5/31:会社退職
6/2〜4:検査入院 生検
6/16:検査の結果→前立腺癌 ステージ2
6/29:再々診 RI とCT(骨シンチ)
7/7:検査結果 転移なし
7/9〜16:北海道 山登り旅行
7/21:治療方針相談 手術を決意
7/28:自己血400cc採血1回目、麻酔科説明
8/3:採血2回目
8/10:採血3回目、眼科緑内障検査問題なし
8/20:入院
8/23:腹腔鏡下前立腺全摘除術 (9:00〜17:40)
8/29:尿道ドレイン(チューブ)抜く
9/1:退院


 尿漏れ対策
排尿後や力んだ時に少し尿漏れするという現象とはレベルが違い、尿を止める筋肉を損傷しているので1日あたり数百mL単位で漏れる。
漏れても別に困らないようなもんだが、おしめをしても横モレして下着が濡れたり面倒なことが起こる。
いろいろなものを試してみたところ、パンツタイプ(写真1)が漏れには強いが、外出先で取り替えるのに苦労する。
トイレを探すのもそうだし、パンツなのでズボンを脱がないと替えられない。そこでパンツタイプ+尿とりパッド(写真2)にする。
パッドの裏側は粘着性になっていて、これだとパッドだけ取り替えればいいので、取り替えやすい。
(地味にお金がかかりますが、宣伝のお金はもらってません。)




      
写真1 写真2

 リハビリ
最近は運動して血行を良くすることが手術後の治りを早くするという風潮らしく、そうでなくても体力が落ちているので
歩いて回復を図り、手術前の状態に8割がた復帰したと思う。(カッコ内は標高差) 

 9/25 【山崎】天王山 270m(240m)自宅から直接
 9/30 【京都伏見】稲荷山 233m(200m)JR稲荷駅から山頂一の鳥居まで。参道「瓢亭」できつねうどん
 10/6 【京都西山】小塩山 642m(310m)南面:金蔵寺から往復 頂上に淳和天皇陵
 10/16 【河内】飯盛山 314m(300m)JR四條畷駅から野崎観音へ
 10/18 【奈良】信貴山 437m(390m)近鉄信貴山下駅から
 10/19 【北摂】妙見山 660m(240m)北面本龍寺から往復
 10/21 【三宮】城山 323m(300m)三宮で昼食後
 10/27 【六甲】甲山 309m(280m) 仁川から登って甲陽園へ
 10/30 【滋賀】山本山 324m(230m)道の駅 湖北水鳥ステーションで食事後プチ縦走
 11/4 【朽木】駒ヶ池、P744、池原山 606m(460m)ブナの黄葉
 11/5 【鈴鹿】綿向山 1110m(760m)快晴、表参道往復、大展望

 再発のリスク
前立腺癌の場合、PSA(Prospate Specific Antigen)というマーカーがあり、術後はこの数値を観察することになります。
 1)
手術から生化学的再発(PSA上昇)までの期間
 2)グリーソンスコア 癌の分化の速さを病理学的に表す数値で、おとなしい癌1から、たちの悪い癌5までに分類します。
   癌組織の中で最も優勢な部分と次に優勢な部分、それぞれの合計で表す数値がグリーソンスコアです。
   最もおとなしい癌が1+1、最も悪性度の高い癌が5+5です。六右衛門の場合は3+3
 3)
PSAの値が2倍になる速さ(月単位)

 上記1)が
3年以上、2)が7以下、3)が15ヶ月以上であることが好ましく予後が良いようですが、根治的手術をした患者の25〜35%が
5年以内にPSAが上昇するそうです。再発の度合によってその後の治療や生き方を考えることができるのは、癌の良い所かもしれません。

 早いもので、手術から2年が経ちました (2018/8)
幸い今のところPSAマーカーの上昇はなく、尿漏れはほぼなくなり(お酒を飲み過ぎるとやや漏れるのでパッド装着。)、体力的にも問題ありません。
残念ながらEDはそのままです。3ヶ月に1回経過観察してますが、血尿が+となったり、陰茎に時々軽い痛みが出たり軽い不具合があります。
およそ3人に一人は5年以内にPSA再発(つまり転移)するらしいので、元気に動ける時間は長くないのかもしれません。
今年になって仕事に復帰しましたが、残りの時間の過ごし方はこれでいいのかと時々考えます。


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